- 作者: 有川浩,大矢正和
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2009/12/16
- メディア: 文庫
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2009年に読んだ本の中で一番面白かった! ダントツ! 断然トップ!
サラリーマンの主人公司には、売れない劇団代表の弟巧がいる。
ある日、司に巧が泣きつく。
「金を貸してくれ」
と。
聞くと、劇団の資金繰りが思わしくなく300万円払わなければいけない。と。
司は巧に300万を貸す。が、返済に条件を出される
今から二年で返せ。劇団が上げた収入しか認めない。――返せなかったらシアターフラッグを潰せ
当然、劇団員は文句を口にする。しかし、そこからのやり取りが実に気持ちよい。
劇団員よりも芝居がかった口ぶりの、のちにシアターフラッグの鉄血宰相と呼ばれることとなる、司のセリフが素晴らしい
「――司さん、最初からシアターフラッグを潰すつもりだっただろ!」
詰る黒川を司は一喝した。
「リクスなしで金が借りられると思うな!」
黒川がぐっと言葉につまったところへまくし立てる。
「降ってわいた借金三百万円、お前ら全員で頭割りしたらたかだか三十万だ! いい年こいた大人が雁首そろえてそれっぽっちの金も用立てられなかったことを恥じろ! 無利子で二年も猶予をやるのに返済できないならお前らに才能なんかない! 二年間死にものぐるいでやれ! 自分の無力を思い知って死ね! 借金できりきり舞いして夢も希望も枯れ果ててしまえ!」
「畜生、この守銭奴!」
黒川が畳に座ったまま器用に地団駄を踏む。司はハンと鼻で笑った。
「守銭奴けっこう! 金は正義だ!」
この後、司が劇団の金の管理をし、劇団の再建に全員で挑んでいく。
一生懸命な人たちは、すばらしい! 面白い! 胸を熱くさせられる。
メディアワークス文庫という、立ち位置が微妙過ぎるレーベルの第一作として、これ以上無い素晴らしい作品であった。