AIの進化のスピードが早いとかタイトルに書くのも恥ずかしいくらい進化が早い昨今いかがお過ごしでしょうか
AIの進化スピード、本当に凄まじいですよね。AI驚き屋の皆さんの刺激的な新機能や「これでもう人間の仕事はなくなる!」といった情報が毎日目に止まります。
一方で、実際の業務現場に目を向けてみるとどうでしょうか。特に非ソフトウェアエンジニアリングの領域では、少しギャップがあるように感じています。
世間で話題になっているAI活用の事例は、ごく一部の「IT強者」の尖ったケースばかりではないでしょうか。実際の現場では、たとえIT企業であっても、せいぜい「ちょっと賢い検索エンジン」として使われていたり、アイコン用の画像を少し生成してみたりする程度に留まっているのが現実な気がします。
「AIで仕事が劇的に効率化した!」という状態には、まだまだ遠いのが実情ではないでしょうか。
「そろばんがExcelになっただけ」からの脱却
社内でAIの利用推進を進めているのですが、推進していく中で共通したつまづきポイントが見えてきました。
AIを上手に使いこなすためには、AIを使う以前の段階……それこそ「紙のDX」の時点で本来終わっているはずの『考え方の転換』が必要なのだと感じています。
少しストレートに表現すると、世の中には「そろばんがExcelになっただけ」という状態の方が、まだたくさんいます。計算する道具がアナログからデジタルに変わっただけで、仕事の進め方や組み立て方はそろばん時代のまま、というケースです。そういう方々にとって、AIは「何かのツールが新しくなっただけ」でしかありません。
ですが、AIは単なる「ツールの置き換え」ではありません。AIを中心とした働き方へと、根本からプロセスを変革していかなければ真価を発揮できないのです。
では、AIをうまく仕事に組み込める人と、そうでない人の差はどこにあるのでしょうか。 それは、ソフトウェアエンジニアが普段から当たり前にやっている、「要素分解」と「手順への分解」のスキルにあると思っています。
AIに挫折してしまう人がハマる「漠然とした指示」の罠
例えば、「自分のタスク管理をAIにやらせてみたい」と考えたとします。
ソフトウェアエンジニアの場合、脳内で特に意識することもなく、以下のように手順を細かく分解してAIに指示を出します。
- SlackやNotionからタスクの元ネタを引っ張ってくる
- タスクの種類を分類する
- 優先順位をつける
- 完了しているタスクには完了マークをつける
- タスクリストを更新する
- 更新が終わったらSlackに通知する
エンジニアはこうしてタスクを分解し、AIに実行させながら、「どこまで上手に動いているかな?」「どこで詰まっているんだろう?」「何が原因でうまくいかないのかな?」と観察し、調整しながらAIに仕事をさせていきます。
一方で、AIを上手に使いこなせていない方は、この「手順への分解」が必要という意識すら無いように見受けられます。 AIに対して、「私のタスクをいい感じに管理して」というような、漠然とした指示を出してしまいがちになります。
これだと、AIも期待通りの動きをしてくれません。そうなると、指示を出した本人は「何ができていないのか」の原因が分からず、他の人にどうやって助けを求めればいいかも分からなくなってしまいます。結果として、「やっぱり難しいな……」と、そっとAIから離れてしまうのです。
これは決して誰か一人の特殊な例ではなく、社内でAI推進をしていて、まったく同じポイントで躓いている方を何人も見かけました。だからこそ、ここが大きな「躓きポイント」なのだと思います。逆に、最初から自分のタスクを細かく分割して考えられる人は、誰に教わらなくてもスムーズにAIを活用し、なんなら「すぐにAIにGASを書かせて自動化しちゃう」という領域まで一瞬で到達してしまいます。
AIを使うための泥臭い前準備の情報こそ、万人の価値があるんじゃなかろうか
最新のAIモデルが登場するたびに、どんどん便利になっているのは間違いありません。 ただ、今のトレンドを見ていると、「最初からできる人」をさらにエンハンスするばかりで、得意な人と苦手な人の格差が広がっているように思えます。
もっと多くの人がAIの恩恵を受け取れるようになるためには、最新機能に一喜一憂するだけでなく、もっと足元に目を向けた「裾野を広げる活動」が必要なのではないでしょうか。
その第一歩になるのが、「業務の棚卸し」や「業務プロセスの整理」です。自分が普段やっている仕事を分解してみて、「AIですぐにできる部分」から少しずつ効率化を始めてみる。そこから徐々に幅を広げたり、プロセスをつなげたりしていくやり方です。*1 *2
このステップを踏まない限り、せっかくのAIも「そろばんがExcelに変わった」以上の効果は生まれないかもしれません。
世の中は今日も、「最新のAIでアレができるようになった、コレができるようになった」という情報で溢れかえってますが、本当に現場で必要なのは、そういう華やかな空中戦だけではないはずです。
結局AIでDXの前に、ExcelのDX(SaaSを前提とした働き方)が終わってないと意味がないし、そもそも紙のDXが終わってないと意味がない。新しい機能をキャッチアップしていくと同時に、自分たちが使っているツールについてもちゃんと精通しておかないと何をAI化できるかの検討もつかない。なんだか華やかなAIよりもずっと以前の状態や考え方、心構えみたいなものが、AIによるDXの本質なのかもしれません。
「AIを始める、その前に……」的な、自分たちの足元の仕事をちょっと見つめ直すような、泥臭くも本質的なお話が、もっと世の中に増えたらいいなと思っています。