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ゴーゴーカレーでロースカツビジネスルー増し頼んでキャベツを4回おかわりするブログ

初心者のための「文学」 大塚英志

初心者のための「文学」 (角川文庫)

初心者のための「文学」 (角川文庫)


昔から本や漫画が大好きで、普通より少し多いくらいは読んできた
今も、年に小説だけなら100冊弱を読む。
大学に入って、同人ゲームのシナリオを書いた事をきっかけに、物語を書き始め、文章力向上委員会で4年半の間1200文字の小説を書き続けた。


他人よりちょっとだけ多く読んだり書いたりしている僕だけど、いまだに「文学」ってなんだかわからない。
「文学」ってなんぞ?


以前ながしろばんり氏のmixi日記のコメントで

なんらかの思想やイデオロギーを背景にしていないと文学とは認められないという風潮が強くて、これは、長い歴史のレベルで見て、その当時の世界を「小説」のかたちで書き残すことが文学者の使命である、という。石原都知事のおじちゃんがこの前の芥川賞で吼えていた

と氏が言っていてそのときは納得したのだけど、でもなんだかまだ「文学」的なんだかヨクワカラナイモヤモヤした感じが残っていた事も事実。


そこにきて、この『初心者のための「文学」』を見つけた訳だ。
作者は大塚英志多重人格探偵サイコの原作者で大学で講師もしている。
僕みたいなオタク的サブカルチャーに理解のある、有り体に言えば僕に取ってキモチの良さそうな評論を書いているはずだ。
と思って買った。


この本では文学というのは以下のような物だと言っている。

(前略)「私」とは何か、という問いや、「私」と「社会」との関わりとは何かという疑問が生まれたわけです。
その疑問に答えるべく誕生した手段の一つが「文学」です。

そっか、そうだよね。文学って私私してるよね。
それのいっこ上のレイヤーが前述したながしろばんり氏のコメントなんだろうなぁ。


全10講+1補講という構成で主に戦前/戦後の文学を扱って、現代との共通点を挙げて行く。
海辺のカフカ』で、何か陰惨な事件が起こったときはすぐに漫画、ゲーム、アニメのせいにすることのおかしさをついたり、
『山椒魚』で、ヒキコモリについて語ったり、
『出発は遂に訪れず』で、「日常がいや」「生きづらい」といったことについてかたったり。
なかなか共感できる話が多かった。


あとがきでこの本のタイトルについて

それは単に「文学」に触れたことのない人のため、という意味ではなく、一度、お互い「初心者」として「文学」を読んでみようよ、という呼びかけでもあります。

と書かれていた。
確かにいままで「文学」を意識せずに本を読んで来た人に対して「文学」という読み方を教える良書でした。