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名称未定ドキュメント"Que"

hidesukeの読書感想文

食堂かたつむり 小川糸

読書

食堂かたつむり (ポプラ文庫)

食堂かたつむり (ポプラ文庫)

歳をとるごとに涙もろくなっている。
ちょっとしたことが、すぐに心を動かし、目頭が熱くなってしまう。

……というような涙もろくなった補正が掛かっていることは確かなのですが、この小説、もう、ずっと目頭が熱くなりっぱなしでした。


喪失と、幸福の物語。


客観的に見て、主人公の彼女が幸せであったか、と考える、絶対に幸せではない。
失って、失って、失い続ける。
それでも、立ち上がるし、ひたむきに生き続ける。
そんな、不幸で失ってばかりいる主人公から、周りの人達は奇跡のような幸福をもらい続ける。
そんなお話。


主人公倫子がが、ある日バイトから帰ると、部屋の中が空っぽになっていた。
同棲していたインド人の恋人が家財道具から、キッチンの梅干にいたるまで、すべてを持ち出して、消えていた。
唯一のこったのは、ガスメータのボックスのなかに置いておいた、祖父から受け継いだぬか床だけだった。
倫子はこのショックで声を失ってしまう。
倫子は、そのままぬか床だけをもって、自分が以前逃げ出した実家に戻るのだ。
実家には、スナックを営む母親がおり、そこで彼女は自分の夢であった小さなレストラン「食堂かたつむり」を始める。
お客様は一日に一組だけ。
まぁ、いろいろあって、ここでご飯をたべると、なんと願いが叶うという噂が広がりいろいろな人達がこの食堂かたつむりを訪れる。



ご飯を食べる前に、この本を読んではいけない。
なんか、ご飯をかみしめるたびになんだか泣けてくる。
一つ一つの料理が心をこめて作られて、それを食べた人たちが幸せな気持ちになる。
温かい。すごく温かい。


でも、やっぱりこの主人公はなんだかいつもいつも、いろいろな物を失っていく。
報われない、けれど一生懸命にいきている。


こころ、揺さぶられる名作