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ゴーゴーカレーでロースカツビジネスルー増し頼んでキャベツを4回おかわりするブログ

瀬戸内寂聴訳 源氏物語 巻七

源氏物語 巻七 (講談社文庫)

源氏物語 巻七 (講談社文庫)

柏木、横笛、鈴虫、夕霧、御法、幻、雲隠、匂宮、紅梅を収録。


光源氏死す。
栄華を極めた男の晩年は、華やかとは言いがたく、悩み、苦しみ、「あはれ」の文学と呼ばれる通りであった。
大きな事件は3つある。
一つ目は、女三の宮の妊娠である。女三の宮は朱雀院が偏愛する娘であり源氏の妻である。しかし、柏木が一方的に恋いこがれ、ついには強姦してしまう。まさにストーカー。その後も迫る柏木を女三の宮は拒みきらず、そうするうちに柏木の子を宿してしまう。この子が後の薫である。
源氏が昔、帝の妻である藤壷と密通し冷泉帝をもうけたことをここで思い出す。なんという良くできたストーリーだ。
この後、女三の宮は世を疎ましく重い出家。源氏ににらまれノイローゼとなった柏木はそのまま死んでしまう。


二つ目は、紫の上の死。
源氏物語で最も幸せな女と言われる紫の上、だけど瀬戸内寂聴は「もっともかわいそうな女」とあとがきに書いている。その気持ちからか、本文中の紫の上は確かになんだか満たされていない。最後は出家を望むが、源氏に許されず。8月14日に逝去する。


三つ目は、光源氏の死。
紫の上の亡き後、人が変わったようになり、社交的だったにも関わらず、蛍兵部卿の宮か夕霧としか会わなくなる。
その間もしっかり手を付けておいた女房に手をだしまくるあたり、この親父、エロイ。ムキー!
紫の上の一周忌が終わり、源氏は出家。「雲隠」という本文の無い章は源氏の死を表している。


今回の見所はなんといっても「雲隠」の一章だろう。
本文は無い。ページをくると、ただ「雲隠」とだけ書かれたページがあり、されにめくると次の章である「匂宮」が始まる。
平安時代、世界最古の小説と呼ばれる源氏物語でここまで斬新な表現がされていたとは。
たしかに、源氏物語はそのオリジナルが残っておらず、また宇治十帖などは後世のつけたしだとかいろいろな説がある。
いや、しかし、この「雲隠」の演出はあまりにも上手いものだと感じる。
源氏の死について具体的に書かず、あえてそれを読者に予感させるような書き方によって、源氏はさらに尊いものと感じられるのではないだろうか?


さて、のこりは3つ。全部読み終わる頃には風も冷たくなるころですなぁ……。


次の読書は村上龍の「半島を出よ」asin:4344410009分厚い本なので時間がかかりそうです。