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ゴーゴーカレーでロースカツビジネスルー増し頼んでキャベツを4回おかわりするブログ

文藝バトルイベント「かきあげ!」5年の歩みを振り返る

この記事はpyspa Advent Calendar 2018 6日目の記事です。pyspa統合思念体の一部となってから1年が立ちました。コノカラダニモズイブンナレテキタヨウダ

かきあげ!」という小説投稿サイトを、かれこれ5年くらい運営しています。 

kakiage.org

その「かきあげ!」で去る11月25日に第二十七回文学フリマ東京に出展してきました。気付いたら「かきあげ!」で出した本は9冊目。来年は10冊目が出ることに気付いたので、ちょっとこれまでの歩みを振り返ってみたいと思います。

ちょっとカロリー高めの長い文章になるので、最後までお付き合いいただけたら幸いです。

「かきあげ!」 is 何

「かきあげ!」は年に2回開かれる、小説投稿イベントです。「かきあげ!」のwebサイトに小説を投稿し、みんなで読んで、面白かった作品に投票します。投票の結果上位3作品と、かきあげ!編集部からの推薦を受けた作品合わせて10作品前後を同人誌にまとめて、文学フリマ東京で頒布するというイベントです。

これまで出した本は通販しています。

kakiage.booth.pm

「小説投稿イベント」と言いましたが、小説でなくても構いません。これまでも、詩や文芸評論、エッセイなどが投稿されています。文藝作品で、規定の文字数を満たしていれば何でもOKです。

「かきあげ!」は毎回テーマが提示され、それに沿ったおよそ3000文字〜4000文字の掌編を書いて提出します。テーマは書くきっかけに過ぎないので、無視しても構いません。実際に、常連ほどテーマ完全に無視して書いています。

次回第10回イベントのテーマは「みみみ」! テーマ無視しても構いません、皆様の投稿お待ちしております! 12月23日より募集開始!!

www.slideshare.net

「かきあげ!」の目的

「かきあげ!」には2つの目的があります。一つは「本を作りたい」もうひとつは「飲み会したい」です。

本を作りたい

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第二十六回文学フリマ東京より

Webで作品を気軽に発信できるようになった現在。だからこそ、自分が書いた本が紙の本になるという体験がどんどん稀有なものとなっている気がします。昔は薄い本をせっせと作って、コミケ(などの同人誌即売会)で頒布する……以外の発表の場がありませんでした。しかし、現在は気軽にWeb上で作品を発表することができあっという間に多くの人に読んでもらえます。そのため、自分が書いた作品が紙の本になるという経験をなかなかできなくなってきているのでは無いでしょうか?

自分が書いた物が、紙の本になる。これは経験してみないとわからない謎の感動があります。まだインクの匂いのする真新しい紙に、整然と印刷された文字列。本屋で手にとる本のような気持ちで読んでみると、確かに、自分が書いた文章が印刷されている。感動だったり気恥ずかしさだったり、なんとも言えない気持ちになります。それは悪い気持ちでは無く、なんだか宝物を手に入れたような。そんな気持ち。

これを味わって欲しくて、本を作っています。

本を作るお金は「かきあげ!」編集部のカンパによって成り立っています。*1ですので、参加者への負担は一切ありません。なんでこんなボランティアじたいなことをしているかというと、前述した「自分の書いたものが本になるという経験をしてほしい」というのと、「かきあげ!」もう一つの目的「飲み会」に来てほしいという意味合いを込めてです……。

飲み会をしたい

だいたいにおいて小説を書くという趣味は、わりと、結構、孤独な趣味です。いや、小説を書く、までは行かなくとも、読書という趣味も結構孤独なもので、周りを見回して、酒を飲みながら延々と本の話をできる人がいるか考えてみてください。普通はいないと思うのです。

でも、趣味の仲間と、趣味の話をワイワイ語らいたい。同じ趣味の話題でワイワイ語らえるのはとっても楽しいということは皆さん経験的にわかっていると思います。

「かきあげ!」のような小説投稿サイトに出入りする人が本が嫌いなわけありません。さらにコイツラ飲み会が大好きです。

ITエンジニアの世界にもいろいろな宗教戦争があって、うっかりあるエディタの話になるとどうでもいい喧嘩が起こったりとか、ある言語の話になるとマウント合戦が繰り広げられてたりだとか、あるツールの話になると老害が跋扈し始めたりだとか、まぁそんなことあるじゃないですか。

文藝世界も同じで、いや、最初から個々人の趣味の問題だからもっとひどいかもしれない。でも、「かきあげ!」の飲み会、特に打ち上げの場合は自ずと話題はその回の投稿作品の話になり、宗教戦争に発展してしまうこともそうそう無いです。その中で、宗教的な一致を見て、より仲良くなる人もいるでしょう。新たな気付き、新たなチャレンジへの一歩となる人もいるでしょう。よきかなよきかな。

まぁ、そんなことはどうでも良くて、とにかく乾杯して酒飲みたいんじゃーーー!

と、まぁ、そんなモチベーションでかきあげ! は運営されています。

「かきあげ!」のシステム

「かきあげ!」の投稿システムであるkakiage-webはnodejs+mongodbで作られています。

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確認してみると一番古いコミットは2013年5月。あー、そっか。その年の夏にデブが治らなくて教育入院2週間の刑に処されて、その間にがーーっと実装したんだった。コード管理はbitbucketです。

2013年当時は、まだweb frontのフレームワークも出たばかりだったし、僕自体がweb frontにあまり興味がなかったので、Expressで普通のwebアプリとしてもりもり書いていました。最近は思うところがあって、フロントエンドをVue.jsで書き直したいと思いVue.js勉強中。

こんななんの変哲もないWeb+DBなアプリケーションになんでmongodb使ってるの? と言われると、mongodbは無料で使えるサービスが多くあるので、というケチケチした理由です。ただこれが悪夢の始まりだったのです……。

放浪のkakiage-web

最初はホスティングにJoyentを使っていたのですが、一般向けのサービス終了。移行先としておすすめされたnodejitsuに移行してしばらくはeverything goes wellだったのですが、nodejtisuがGoDaddyに買われ一般向けのホスティングサービス終了。移行先としておすすめされたmodulusに移行し、その後xervoと名称変更がなされるのですが、こいつも一般向けのホスティングサービス終了。いろいろ悩んだ結果、いまはherokuで動かしています。herokuは一般向けのホスティング、おいそれと辞めないですよね??

ひどいのは「無料だから」と思って採用したmongodbのホスティングサービスです。もうどんだけ移行したか覚えてないし、コミットログ追うのもしんどいのしんどい! ってくらい移行しました。現在mlabに落ち着いてますが、mlabもサービス終了する? みたいなメールを拝受した気がしていますが、気が気じゃないので見なかったことにしています。

「かきあげ!」を支える人々

「かきあげ!」は参加者の皆さんに支えられています!

まぁ、それだけでは無く、スタッフとして「かきあげ!」を支えてくれている人たちがいます。「かきあげ!」編集部と言われる集団です。

本を作る、本を売る、システムを運用する、どれも金がかかります。「かきあげ!」は収支管理表を公開しています。この費用は編集部のカンパで成り立っています。

また、編集部がやっていることとして以下があります。

  • 本を作る際の原稿のレビュー/校正
  • Twitter botへの仕込み
  • かきあげ! 関連のtweetを togetterへまとめ
  • 参加者の勧誘
  • 投稿された作品を読んで感想をつける

その他にも最近では原田さんという方が主催している朗読劇でよく「かきあげ!」に投稿された作品が朗読されたりしています。

twitter.com

私も一度、この朗読劇を見に行ったのですが、いや、面白いものですね。自分では気付いてなかった発見がたくさんあるし、何より「紙の本になる」より貴重な体験でした。

朗読の様子は週末はかきあげ! 祭りやで〜! - かきあげ!こちらのエントリにYoutubuへのリンクがあります。

皆さんに支えられてのかきあげ! ですmmm

「かきあげ!」参加者募集中!

というわけで、「かきあげ!」では参加者を募集しています。ジャンル不問、3000~4000文字の掌編文藝作品を投稿してください。

kakiage.org

作品投稿された方には1点お願いしていることがあって、それは他の人の作品を読んで感想を付けてほしいということです。「かきあげ!」はその前身の一つである文章力向上委員会の思想である「他人の文章の感想を書くことで、自分の文章力を向上しよう!」というものを受け継いでいます。また、単純に感想がたくさんつくと、嬉しいですよね?

作品を投稿されてもいいですし、読み専でも構いません! 感想つけていただけるととても嬉しい。

5年続けることができたので、もう5年くらい続けられるといいなぁ……と思っています。

はい、ここからはどうでもいい話なのだけれども、どこかに書いておかないと失われる歴史だと思うので書いておく。

「かきあげ!」の歴史

「かきあげ!」開始の経緯

00年代のテキストサイト全盛期、CGIを駆使して小説投稿サイトをしているサイトがいくつかありました。その中でも QBOOKS文藝越人(跡地)、G99文芸部(だったかな)、 文章力向上委員会 書庫 が集まって、サイト対抗の小説バトルである バトル仮面舞踏会 が行われていました。

このバトル仮面舞踏会というやつは、それぞれの所属、ペンネーム(ハンドルネーム)を隠して作品を投稿し、優劣を競うというイベントでした。*2

で、このバトル仮面舞踏会、大概打ち上げがあって、みんなでワイワイ飲むのが楽しかった。この原体験が「かきあげ!」のコンセプトの一つになっています。

紆余曲折あり、バトル仮面舞踏会は終了。しばらくして「飲むきっかけがほしいよね」くらいのノリで、システム作ってみんなに出資を募って「かきあげ!」が立ち上がったのでした。

「かきあげ!」の思想の経緯

僕が文章力向上委員会に所属していたし、代表の千村はつひさんの考え方に大変共感を持っていました。

「お題に対して1200文字の小説を書く」という授業が日芸文学部で行われており、それをwebに持ってきたのが千村さんの文章力向上委員会でした。「かきあげ!」は本にすることが前提なので、見開き4ページに収まる文字数にして、この「お題」=>「掌編」というやり方を継承しています。

また、「他の人へ感想を書いてください」というのも文章力向上委員会からのやり方です。そもそも感想を貰えると嬉しい。しかし、それ以上に「他人の文章を読んで、それに対して感想を書いて、自分の文章力を向上させよう」という考え方は理にかなっています。結局、創作物、特に書物は読者があって初めて成り立つものです。つまり読者の方を向いた文章を書かないと面白くない。他人の作品を「どう感想書こう?」と考えながら読むと、実は自分の作品に対しても客観的な視点が目覚めてきます。文章を書くとてもいい訓練になります。

しかし、なんといっても、文章力向上委員会から最も影響を受けた点は「本を作る」という点でした。文章力向上委員会も年に1冊本を作って第3回の文学フリマ毎年頒布していました。この、本になるという体験を他の人にも知っておらいたいという思いから「かきあげ!」をはじめました。

なんだか無駄に長くなりましたが、そんな感じで、今後もよろしくおねがいします。良い年を〜〜

*1:ちなみに編集部は本にする作業の中で、原稿のレビュー/校正もやっています。お金を払って罰ゲームを受けているようなもんですね……。

*2:この名残で「かきあげ!」では普段のハンドルネームではない名前で作品投稿する人が多いです