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フリーター、家を買う。 有川浩

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

有川浩作品といえば、ベタ甘。自衛隊。
そんないつもどおりの有川浩作品のつもりで読み始めたら超重い内容で死んだ。
しかし、これだけは断言できる。
傑作。

あらすじは裏表紙から引用する

就職先を3ヶ月で辞めて以来、自堕落気儘に親の臑を齧って暮らす"甘ったれ"25歳が、母親の病を機に一念発起。バイトに精を出し、職探しに、大切な人を救うために、奔走する。本当にやりたい仕事って? やり甲斐って? 自問しながら主人公が成長する過程と、壊れかけた家族の再生を描く、愛と勇気と希望が結晶となったベストセラー長編小説。

まぁ、あらすじ以上に内容は思い。

母親の病とはストレスからの欝である。
長年に渡り、近隣住人からの嫌がらせを受け続けていた。今までは、家族のだんらんの時間でなんとかもってきていたのだけれども、職をやめてから主人公はなんとなく気まずく、夕食でも顔を合わせ無いようになっていく。
もともと、自分が良ければそれでいい父親(近隣住民からの陰湿な嫌がらせを受ける原因を作ったのはこいつだが)は妻の様子には目もくれない。
徐々に追い詰められ、気付いた時には重度の鬱となっていた。

この母親を治療するにはストレッサーとなっているこの町内から離れることが一番だが、父親は「鬱は心が弱いからなるんだ」などと言い取り合わない。
それを気に主人公は立ち上がる。父親は頼れない。ならば自分が家を買い、母親のために引越しさせてやろうと。

登場人物の心情の変化や、成長、でもやっぱりダメ人間な部分、弱い部分、それを乗り越えていく様子など、本当に細やかに書かれていて、胸に迫るものがある。
前半はもう、とにかく重くて読んでいて苦しい。ダメ父息子のダメっぷり、クズっぷりにイライラする。
そして、追い詰められてから立ち上がったのでは遅いという現実がつきつけられる。人間の弱い一面を嫌というほど付き受けられる。
だけど、それを救うのもまた、人間なわけだ。
主人公は夜の土方仕事で稼ぐのだが、そこで新しい人間関係、信頼関係を勝ち取り、それが人間的成長に寄与していく。

ああ、いいはなしだー。いいはなしだ! と読み進んで油断しているところへ、この人はきちんとベタ甘ストーリーを入れてくることを忘れないところが小憎いw

もう一度言う、この本は傑作である。是々非々一読してもらいたい。