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アジャイル開発とスクラム 平鍋健児 野中郁次郎

アジャイル開発とスクラム 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント

アジャイル開発とスクラム 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント

アジャイルスクラムというソフトウェア開発手法に関する書籍は、現在結構ある。
しかし、その多くは現場で実際にソフトウェアを開発している人たちに向けて書かれており、その考え方から実際のテクニックまでかなり詳細に書かれている。
こういうのは、現場で実践する人にはすごく役に立つ。
しかし、現場に導入したい場合、とくにスクラムは、上司や組織の協力が重要となる。

そういった、上司などにスクラムの導入を説得するのは、いままでは現場の実践者たちがメリットを説明し理解してもらうことが必要だった。
認定スクラムマスターの研修や、スクラムの勉強会でも「組織や上司に導入を説得するのはどうすればいいか」といった質問を何度か聞いたことがある。
これがなかなか骨で、スクラムという方法がいいのはわかっているのだけど、どうしてもソフトウェア開発の文脈で喋ってしまったり、詳細に話すぎてしまったりしてなかなか上手にいかない。

でも、今後は、この本がそのバイブルとなる。

アジャイル開発を精力的に広めている平鍋健児さんと、スクラムの考え方のもととなった論文 the new new product development gameの著者である野中郁次郎さんが著者である。

この本では、スクラムの考え方、やりかたの簡単な説明。企業での実践事例、そして野中先生やスクラムの提唱者ジェフ・サザーランドさんへのインタビューなどが収められている。
技術書というより、ビジネス書だ。
価値を生み出すために、変化に対応するために、いま現場が求めていること、経営や組織といった大きな枠組で取り組まなくてはいけないことについて多くの示唆がある。

スクラムというのは、コミュニケーションの方法だと最近強く思う。
この本の「おわりに」の章で、2011年にジェフ・サザーランドさんが来日した際、野中先生と一緒にスクラムのイベントが行われた際のエピソードが書いてある。このやり取りが興味深い。

参加者からの質問に、ジェフとガブリエルが答えるという場面だった。一人が質問した。
「プロジェクトには、営業部門、マーケティング部門、サポート部門など、いくつかの部門にステークホルダーがいるのです。そして、どの機能を優先すべきかについて意見が分かれているのです。意見を一つにまとめるには、どうしたらよいのでしょうか」
(中略)
この質問に対して、ガブリエルが突然、振り返って聞いた。

「野中先生は、どう思われますか」

(中略)

「合宿をしなさい」
そして、こう続けた。

「形式的な会議で決めることはできない。いろんな背景をもった人の集合において、形式知で語れること、理解し合えることはごく一部だ。合宿をし、一緒に飯を食い、泊まって徹底的に話をする。そうすると、形式知は脱ぎ捨てられ、自分の主観で話をするようになる。そこで、なぜこのプロジェクトに自分が参加しているのか、という根源的な問いにまでたどり着けるだろう。そこからはじめて、一つの共通理解が生み出される。この過程をみんなで踏みなさい」

いま、行なっているプロジェクトは必ずしもうまくいっているとは言いづらい。
意識の違い、認識の違い、自分が与えられていると思っている役割の不一致。
なにより、ゴールに向かって一丸となって進んでいるという感じがすごく薄い。

僕達くらいの予算規模で合宿をすることは難しいかもしれないけれども、もっと本音で話し合い、自分たちの主観での意見を言い合えるような関係を作り出せるようにならないとなぁと思った。