2013年11冊目
- 作者: 伊賀泰代
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/01/28
- メディア: Kindle版
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タイトルこそ採用基準だけれども、これはリーダー論の本。
マッキンゼーで長年にわたり、採用担当マネージャーをやっていた著者(おちゃらけ社会派として有名なちきりんさんとの噂あり)の、日本という国への危機感への叫びとも取れるような内容だった。
日本には圧倒的にリーダーシップをとれる人がいない! という内容。
スクラムにおける自己組織化
この本を読みながら感じたのは、スクラムでいうところの 自己組織化 とはリーダシップを求めることだったのかーと思った。
アジャイルなソフトウェア開発手法であるスクラムでは、開発チームには自己組織化を求める。能動的に動けるチームこそが生産性の高いチームであるということなのだが。
スクラムにはスクラムマスターというスクラムを推進するための役割がある。スクラムチームのリーダーと思われがちなのだけれども……そうか、この考えが間違いだったのだ。
リーダーというのは、状況を取りまとめて決定を行い、いろいろな人に指示をだす。リーダーとその部下というような構造が思い浮かぶけれども、マッキンゼーではそうではない。全員がリーダーで、全員が能動的に動き、全員が状況を分析し、全員が自分の責任の元に動ける。階層構造の組織図的な関係ではなく、自分を中心としたスター型の人間関係。つまり全員がリーダーであるのだ。
ああ、これが自己組織化なんだ。
自己組織化されたチームはスクラムマスターが不要になるといわれるのだけれども、確かにこのようにチーム全員がリーダーシップを発揮し、能動的に動けるのであれば、なるほどスクラムマスターは不要となる。
リーダーシップとは何か
ではリーダーシップは何だろうか。
本書では一例として、マンションの組合の会合(?)的なシチュエーションを挙げていた。
会合でお菓子が出たが、最後まで余ってしまった。一人一つづつ配ったら人数より少ない。でも、余ってもおいて帰るわけにはいかない……というようなシチュエーションで「どなたかお子さんやお孫さんがいらっしゃる方、お菓子があまっていますのでどうぞお持ち帰りください」と自分から声をかける人。これはリーダーシップだ。
なぁんだ、そんな簡単な事か。と思うのだけれども、じゃぁ、そのシチュエーションで自分がそんな風に声をかけることができるかと言われるとそうではないなぁと思う。(まぁ、無関心ということもあるのだが)
日本では、このリーダーシップを育むということが全くない。
出る杭は打たれるし、言い出しっぺが損をする。妙な空気を読んで場を見出さないように心がける。時間のむだだとわかっている会議に出席し、文句の一つもいわずにノートパソコンに向かい内職をする。こういうのはリーダーシップが無い典型であると本書では断じている。
欧米では、就職や大学入学のときに、自分がいままでどのようにリーダーシップを発揮してきたのかを問われるそうだ。
採用基準
本書のタイトルである採用基準。これはマッキンゼーが求める人材の要件の話である。
- リーダーシップがある
- 地頭がよい
- 英語ができる
この3つが求められるのだけれども、日本では地頭のいい、優秀な人間は多くいるが、リーダーシップが取れる人間、英語ができる人間というのが圧倒的にいないというのだ。ここを出発点としてこの本ではリーダー論が語られていく。なのでタイトルは採用基準。
すごく考えさせられるし、自分にリーダーシップがあるかどうかということも考えさせられる内容だった。
また、スクラムチームを率いているので、チームの自己組織化を促す必要がある。それぞれがリーダーシップを発揮し生産性の高い集団になるためにはどうすればいいのか。これを僕は今後ずっと考えていかなくてはいけないなぁ、と感じた。
蛇足
本書ですごく印象に残ったのは「会議で発言しないのは給料泥棒とおんなじ」というくだりだった。会議に出席して、何も喋らないというのは、つまり、その会議の結論に何も関与していないのと同じことで、つまりいなくてもいいという事。バリュー(価値)を生み出せていないのだ。
マッキンゼーでは、コンサルタントが招かれて会議に出席し、会議が終わった後に「私はこの会議でバリューを生み出せたか」という事を確認することがあるらしい。価値を生み出さなくてはいけないという、強烈な意識の高さこそが、高い生産性につながるのかなぁと思った。
そういえば、昨日、今日と僕は一日中ミーティングに立っていたのだけれども、よくよく観察をしていると影響力の強い人、各部署のリーダーたちは、なるほど、いろいろなことをとにかく発言し気付きをもたらしてくれる。とあるスクラムチームのプランニングでは、メンバーにはおとなしい人が多いが、みんながよく発言し、一人ひとりが課題に対して挑戦していこうという意欲を感じた。
リーダーシップもそうなのだけれども、自分は常にバリューを生み出せているのかを意識して仕事に臨んでいかなくてはなぁということをよく感じた。
気づきの多いいい本だった。