名称未定ドキュメント"Que"

ゴーゴーカレーでロースカツビジネスルー増し頼んでキャベツを4回おかわりするブログ

新世界より 貴志祐介

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)


新世界より(中) (講談社文庫)

新世界より(中) (講談社文庫)


新世界より(下) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

ごく最近に伊藤計劃のハーモニーを読んだ*1。今回読んだ「新世界より」と奇妙な共通点がある。
両作品とも、一度滅んだ未来の話だ。
そして、両方共、社会が人心を管理し見せかけの平和を謳歌している。
そして、両方共、崩壊する。


ハーモニーの描いた未来は科学技術が発達して崩壊する未来。新世界よりは科学技術が崩壊して人間たちが呪力と呼ばれる超能力を得て、そして崩壊する未来。
伊藤計劃貴志祐介も現代のSF小説の先端をひた走る作家だ。その作家が、両方共「未来はそんなに明るくない」という。


新世界よりは、1000年後の日本が舞台。
核戦争、超能力戦争(?)などによって科学技術の文明は滅んでいる。その代わりに人間は呪力という超能力のような力を手に入れ、呪力を使って現代的な生活(植物/動物などの品種改良、金属やガラスの加工、発電、その他もろもろ)を行っている。
子供たちは社会から病的に管理されていて、現在は妊娠21週目までは中絶できるが、これを満17歳まで引き上げている。コレにはもろもろな理由があっておはなしの根幹に関わるからあえて口をつぐませてください……。
まぁ、要するに、大人たちは17歳までは殺生与奪の権利があるわけです。
作品は、主人公が小説という形で手記を残すという体で進められる。
子供の頃から、子供時代の終わりまで。そして、もう一度世界が崩壊しようとするところまでが描かれる。


上中下巻からなる大長編で、そのボリュームを活かしきる伏線に次ぐ伏線。
子供の頃からちょいちょい起こる事件や、まわりで起こる事件が、徐々に事件の引き金になったり解決の糸口になったり。よくよくねられたストーリーが本当に面白い。
グイグイと引き込まれて、熱にうなされるように読みふけった。
会社の行き帰りと、家に帰ってから寝るまでの間、それこそずーーっと読んでいた。
小説の体をとった手記という設定だからかもしれないが、文章には少し素人っぽさがある(演出だと思うが……)。あの、「あの時はこんなことになるなんて夢にも(ry」メソッドが多用されているのが気になるところなのだけれども、それが呼び水となって次はどうなる? 次はどうなる? という感じでグイグイ読み進めていった。


ハーモニーと新世界よりの共通点は興味深い。
管理社会、協調、不自由な平和、思考停止。
世界ってそういう方向に進んでいるのだろうか?
政治や社会ってものにあまり興味や関心が無いので、そのへんをきちんと考察ができないのだけれども、なんとなく、そういう場の空気のような物があるのだろうか……。
世界の距離が縮んできて、人との距離が短くなっていく世界が、このSFの世界のような方向に邁進してほしくはないなぁ……と思った。

*1:[asin:415031019X:detail]