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少年たちはなぜ人を殺すのか 宮台真司・香山リカ

少年たちはなぜ人を殺すのか (ちくま文庫)

少年たちはなぜ人を殺すのか (ちくま文庫)


東浩紀大塚英志の「リアルのゆくえ」で、やたらと名前が挙がっていた宮台真司香山リカ
この人たちはどんなこと言っている人なんだろう? と興味をもっていたら、なんと二人の対談が丁度文庫になっていたので、買って読んでみた。


この対談では、佐賀のバスジャック事件や大阪の酒鬼薔薇事件を題材にして社会学や、精神医学の観点から「少年たちはなぜ人を殺すのか」について議論をかわしている。
統計やマスコミの嘘を指摘しつつ、論理的な考察を、精神科医としての実践も交えながら、説いていく。
状況の変化であるだとか、簡単に人を殺してしまう子供たちを留めるためにどうすればいいのかであるだとか。
あとは映画「ユリイカ」のお話であるだとか、そういったことについて語られていた。


……んだが、実は彼らが語っていることは「少年がなぜ人を殺すか」ではなくて、どうしようもなく「今」について語っている。
「今」という時代はこういう時代で、何が問題で、どうすれば(その人の考える)理想に近づくか。
そんなことについて語られているんだということに気づいた。
前述の東浩紀大塚英志だって、オタク文化への評論であったり、文芸評論であったりしているけれど、じつはそれは「今」について語っているのだなぁ……ということに唐突に気づかされた有意義な一冊でした。


ここからは読書感想文とは別の話。
某所で、某チャットでの議論のありかたについての議論が行われているのだが
なんだかそれに対して凄く示唆的な内容が書かれていたので引用する

 例えば、思想について語る場合、本当だったら「教養の絶対的な差異」が明らかに存在していて、誌上での論争はおろか、対等な会話さえ、感嘆には成り立たないはずなんですが、インターネットではそういう「絶対的な差異」が抹消され、誰もが横並びに比較可能な「キャラ」になるわけです。通常は乗り出せないコミュニケーションの敷居を下げ、コミュニケーションチャンスを拡げるという意味では良い面もある。
 ところが明らかに悪い面もあって、ある種の「世界の平板さ」を否応なく見せつけられることになるわけです。用は、インターネットがなければ当然意識せざるを得なかったはずのコンテクストの差異が、完全に抹消されてしまうこと。(後略)


また、記憶の外部化に関する考察も面白い

 実際いろんな大学院生をみていると、記憶の外部化が進んでデータベースが充実してきましたから、それを利用する形で短期的なリサーチ能力は、確実に上昇してきました。ところが本人に記憶が内部化されていない分、ある種の主観性が希薄になっていて、有能な人間ならば誰でも言うようなことを反復するだけになっているわけです。逆に言えば、中森明夫とか見沢知廉みたいな、僕の同世代では少数派になった”手書き”派は、異常な記憶力を持つがゆえに、異常に主観化された世界を生きている。だから単なる物真似を別にすれば、彼らが言うことは、他の人には言う動機づけが存在しないんですね(笑)。


いろんな人の意見を読むのは面白い。
とくに世界が確立されている人の意見は本当に興味深い。