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ゴーゴーカレーでロースカツビジネスルー増し頼んでキャベツを4回おかわりするブログ

ハーモニー 伊藤計劃

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

向こう側にいたら、銃で殺される。こちら側にいたら、優しさに殺される。どっちもどっち。ひどい話だよね

若くしてなくなった著者が残したたった2つのオリジナル長編小説の2つめ。
大災禍によって荒廃した世界から復興した人類。
彼らはある年齢になるとWatchMeという医療用のソフトウェアを身体に組み込む。
WatchMeがあるおかげで、世界から病気は駆逐され、死が遠いものとなり、争いがなくなった。
そんな世界。
そんな世界に息苦しさを覚え、死のうとした少女たちの物語。

お話は壮大で、よく練りこまれてあり、緻密な設定、描写で、ロジカル。
大傑作と呼んでいい。本当に、本当に面白かった。

本作はSFであり、ミステリである。
この作品がここまで面白い理由は『世界観』だ。
GREEの小説投稿コミュに参加しているので、ときどきそこに投稿される小説や、感想を読んだりするのですが、そこでときどき「世界観が〜〜」と言っているものを目にすることがある。
もしくは剣と魔法のファンタジー。学園ファンタジー。異能バトル。戦隊もの。etc。etc。
現代、僕達が生きて、生活を営んでいる世界が舞台ではない作品はこの「世界観」という奴がすごく重要になってくる。
でも、前述した投稿サイトで、そういう世界観が重要になってくるような作品に限って世界観が伝わってこないものが多い。
なぜ伝わってこないんだろう。
設定不足? 描写の稚拙さ?
たぶん、そういうことはあまり重要なファクターではなくて、おそらく考え抜かれてないんだ。
だから綻ぶ。突込みどころが残る。のめりこめない。おもしろくない。

この、伊藤計劃の作品の作りこまれた世界観。
たぶん作りこまれたっていうのは、徹底的に考え抜かれているってことだ。
こうなったら、こうなる。だからこうなる。だからこうだ。
恐ろしいまでにロジカルに、世界を構築している。
その上で、その構築された世界のなかでどういう問題がおきて、どういう人間が生きているのか。
そういうことを考えて作品がつくられている。
これ、本当にすごい。

僕は劇場版パトレイバー*1が大好きなんだけど、これも一発のミサイルがレインボーブリッジを破壊して、そこから始まる一連の擬似的な戦争状況という想像の世界で、何がどう起こっていくかを緻密に描写している。そこが面白い。本当に面白い。

こういう作品がもっといっぱいでてきたらいいなー

*1:[asin:B0018KKQB4:detail]