- 作者: クリス・アンダーソン,小林弘人,高橋則明
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2009/11/21
- メディア: ハードカバー
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現在、実に様々なコンテンツやサービスが無料で提供されている。
自分が普段よく使っているサービス、とくにインターネット上のサービスは無料だらけだ。
GREE、ニコニコ動画、Google、mixi、はてな、twitter、etc...
実に様々な物が無料で提供され、その無料であることを、なんの疑いも疑問も抱かずに享受している。
でも、これらのサービスはボランティアで行われているわけでは無く、その裏側には企業活動があり、お金を儲ける仕組みがあるのだ。
この『フリー』という本では、この無料のサービスのビジネスモデル、『フリーミアム』について実例を交え、反論に対して反論し、わかりやすく丁寧に解説している一冊。
私はweb系のプログラマをしているので、とても興味深い、というか身につまされる内容でした。
# 読めば読むほど、弊社のサービスの方向性が間違ってる気がして仕方ない。
しかし、このwebで商売をしている人だけで無く、webでコンテンツを公開している人たち、例えば自作の小説とか、も読むべきかなと思った。
この本で解説されているフリーミアムというビジネスモデルを一番端的に説明しているのはこの部分だろう。
従来は製品の九五パーセントを売るために、五パーセントを無料で提供するのだが、フリーミアムは五パーセントを売るために、九五パーセントを無料で提供する。
また、次の部分も興味深い。
ウェブは主にふたつの非貨幣単位で構成されている。注目(トラフィック)と評判(リンク)だ。
身に覚えがあるだろう。
ほとんどのサービスはフリーだ。しかし、いくつかのサービスはフリーのプランもあるが、有料のプランを使っていると言うようなサービス。
私の場合は、ニコニコ動画、はてなダイアリー、DMMアダルト(ぁ)は有料会員として利用している。
なぜ、このようなことが可能なのか。
デジタルの商品は、その商品にかかるコストは限りなく、無視できる程に小さい。
だから、数パーセントの有料会員を得るために無料で便利なサービスを提供する。
こうやって、大きな市場にリーチすることこそがビジネスの上で大事だと言うことだ。
なるほどー。ふむふむ。
そういや、こんな記事を見つけた。
少女のレモネードスタンから学ぶ9つのマーケティング術
これもなんというか、フリーミアムの一つかなぁ……とも思った。
しかし、ビジネス以外の点で、この本の以下の部分に私は感じ入るものがあった。
フリーはプロとアマを同じ土俵にあげる。より多くの人が金銭以外の理由でコンテンツを作るようになれば、それを職業としている人との競争が高まる……[中略]……それらすべては、出版事業にたずさらることがもはやプロだけの特権ではないことを意味する。けっして、出版によってお金が稼げなくなることを意味してはいない。
そうそう。プロとアマの垣根をとっぱらっているのだ。
「野生のプロ」などと呼ばれる人たちが出てくるのはまさに『フリー』の恩恵であろう。
なぜだが、私の知り合いには小説を書くことを趣味としている人たちがたくさんいるのだけれど、この人たちはこの垣根の無くなった「フリー」という世界で勝負しているのだなぁ、と思うと、これはすごいことだと思った。
しかし、垣根がない以上、読者はプロの作品読む場合と同じ視点で作品を見る。
無料で読むことができるコンテンツという意味で、プロが書いたものだろうと素人が書いたものだろうと、そこに値段的優劣はない。
では、その作品に読者が貴重な時間を割いてまで読む価値があるのか?
そういう厳しい切り口で作品に接する。
そこで面白ければ、注目と評判を得て、価値のある物になっていくのだなぁ。
ビジネスに限らず、ネットを通した創作活動という点からも豊富な示唆に富んだ名著でした。
DIAMOND online に作者の独占インタビュー記事が載っているのでそちらもあわせて読みたい。
http://diamond.jp/feature/dolweekly/10001/
しかし、この本、巻末に素晴らしくよくまとまったまとめがついているので、そこだけ読めばことが足りるという説も……