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恋文の技術 森見登美彦

恋文の技術

恋文の技術


主人公 守田一郎が彼の友人、先輩、妹、教え子、好きな人へ宛てた手紙が記載されている小説。
往復書簡ではない。
一方的な書簡集である。
そして、立派な小説だった。
ものすごく面白かった。


京都の大学院生である主人公は、大学1年の春に研究のため能登半島の研究所に派遣される。
そこから、京都にいる知人達にとにかく手紙をだしまくる。
文通をしまくる。


手紙なのだ。手紙なのだけど、手紙の裏で起こっている事件や出来事が事細かに読み取れて、しかもそれがいちいち面白い。
全12話からなっているが、それぞれの話では特定の人に宛てた手紙だけを集めてかいてある。
つまり、たとえば友人に書いた手紙で起きた事件について、次の章で先輩に宛てた手紙でまた別の角度からの証言がでてきたり、
いかにして裏で暗躍していたかとか、実は宛先の知人同士がつながってるんじゃないの? とか。
手紙だからこそおぼろげに浮き出てくる人物相関がまたたまらなく面白い。


最終的には、この文通を通して、主人公は「恋文の技術」の確立を目指すわけだが……


この主人公は森見作品にかならずでてくるいわゆるくされ大学生なのだが、なかなか魅力のある男である。
うちのサークルの絵師*1と似たところがある。



コレは名作。絶対読むべき。
小説の新しい形、とまでは言わないけれど、文通エンターテインメントであることは間違いない。

*1:付き合いが深くなればなるほど信用できなくなるのだが、妙な愛嬌があり、ほっておけない^^;