- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 文庫
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奥田英明の直木賞受賞作がやっとこさ文庫化。
ドラマ化もされた、シリーズ。
注射マニアで子供のような精神科医伊良部のもとを訪れる患者達の物語が書かれた短編集。
奥田氏は本当に、エンターテイメント作品が上手だ。
しかも、この小説はその王道をまっすぐ突っ走っている。
悩めるプロフェッショナルがいる。
その悩みが強烈過ぎて、精神病となるが、さらに強烈なキャラである伊良部医師に振り回されているうちにその病から解放されて行くというもの。
登場する患者は個性豊かだ。
ヤクザ、空中ブランコ乗り、女流作家、プロ野球選手などなど
それらに共通するのは「自信過剰」である点。
いや、過剰というのは言い過ぎで、その道のプロだからこそ曲げられないものがあり、それがプレッシャーとなり、様々な要因でだめになっている人達だ。
患者たちの深刻な悩みに対して、とてもコミカルに描かれる伊良部医師との対比がいい。
たぶん、自分が当事者だったら本当にイライラするんだろうな。
それでも、なんとなく気になってしまう伊良部医師の不思議な魅力がまたよい。
この本は、すべてに救いがある。
すっきりしない終わり方のものもあるけれど、どれも、患者がほぼ自助努力によって病状が回復していく。
患者が「ハッ」と気付く原因にはいつも伊良部がいるのだ。
読みやすい、極上のエンターテイメント作品