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日本の昔話

日本の昔話 (新潮文庫)

日本の昔話 (新潮文庫)


柳田国男は日本の民俗学の父である。
急速な近代化を遂げる明治時代に各地に伝わる物語の収集を行った。物語というのは口から口へと語り継がれ、語り継がれる間に内容が変わって行ったり、物語そのものが無くなってしまったりする。それを明治という、近代化が始まった直後に収集し、本にまとめ残したという功績はあまりにも大きい。
現代、親から子へ、様々な日本の昔話を聞く事はあるだろうか?
自分の場合は、祖父母(あと父)から佐賀県呼子に伝わる「磯女」*1の話を聞いた事があるくらいかな?
今、この時代に始めたのではなくて明治に物語の収集をしたというのがかなり大きい。(しかし、遠野物語のあとがきで「既に失われてしまった物語も相当数ある」と氏は述べている)


さて、この日本の昔話は長短あわせて100篇程度の物語が収録されている。
なるべく、同じようなジャンルで固まるように物語がならべてある。
例えば「天狗の話」だとか「竜宮城の話」だとか。日本全国に同じような物語は多々あり、同じようなものが近くになるように配置されているのだ。
この本は名著であることは間違いない。
昔話らしい昔話だ。
いいじい様とわるいじい様がでてきて、いいじい様は正直で得をするのだけれど、わるいじい様は他人を妬んで悪知恵を働かせて損をする。
という具合に分かりやすく教訓が示されているものがおおい。
子供が小さい頃に読み聞かせてあげたら、きっと子供の想像力とかを養うのにいいんだろうなぁ……
短い話はそれこそ3行くらい。長い話でも2、3ページしか無い。チョコチョコよむにはもってこいの逸品。
なんといっても、その似たようなストーリーが日本全国のあちらコチラにあるということ自体が驚きだし、自分が知っているバージョンに巡り会えたときの面白さはなんともいえないものがある。


ただ、個人的には遠野物語 (新潮文庫)の方が俄然好きだ。
コチラにはいい知れぬ気味の悪さがある。怖いのではない気味が悪いのだ。
遠野物語を人にお勧めするとき、僕はいつも鳥肌が立つ。今も鳥肌がたっている。でも、その気味の悪さを実際に他の人に伝えるのは難しい。
なぜなら、本当の意味で気味が悪いという体験をしたことが有る人が圧倒的に少ないからだ。
怖い、とか恐怖とか、そっちの体験はみんな良くしてるのだけど、あの何とも言えない、後をひく感じの気味が悪い体験をしたことがある人は少ない。


僕が気味が悪いという感情を始めて全面に意識させられたのがこれだ。
遠野物語の何が気味悪いかといううと、昔話なのに、そこに全く教訓めいたものが無いところだ。
たとえば「こうこう、こういう日には神隠しがおこって、神隠しになった人は帰って来れないし、仮に帰ってきたとしても呆けて廃人のようになっています」というようなストーリー。
事実を淡々と述べられているだけ、という感じなのだ。
だから、それが、なんとなく作り話で無いような印象を受ける。少なくとも僕は、遠野物語で語られているようなことは実際に起きているのではないかと考える。それくらい説得力があるんだ。
だから、気味悪い。



エロゲ、ギャルゲでリファされる事の多い文献だけれども、これは本当にお勧めの一冊である。

遠野物語 (新潮文庫)

遠野物語 (新潮文庫)

*1:呼子の港の船は岸にロープをつながない。これは丑三つ時に磯女という妖怪がロープを伝って陸に上がってくるからだ。という話