名称未定ドキュメント"Que"

ゴーゴーカレーでロースカツビジネスルー増し頼んでキャベツを4回おかわりするブログ

半島を出よ (下)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)


上巻の感想はコチラ
いよいよお話はクライマックスへと疾走していく。


あとがきで作者が書いているのだが

昭和歌謡大全集*1という小説の登場人物の生き残りとその新しい仲間が福岡でテロを計画しているが、それより先に北朝鮮のコマンドが福岡を制圧してしまう、そういった構想の作品十年くらい前から考えていた。

と。

昭和歌謡大全集 (幻冬舎文庫)村上龍の小説で、調布が舞台となっている。
おばさんvs少年達が報復に次ぐ報復で殺し合いをする。
最終的には少年達が貧者の核爆弾と呼ばれる「燃料気化爆弾」をヘリから調布駅前に投下し調布を壊滅させる。
このときの主人公の一人が本作で少年達のリーダ的存在のイシハラである。


終わり方は昭和歌謡大全集を彷彿とさせられる壮大かつ壮快な終わり方であった。
エンターテインメント作品として高いレベルで完成されている、とどうじに沢山の問題提起が行われている社会派の作品だった。
緻密な取材に基づく作品作りには舌を巻くし、ありとあらゆる方面に向いた想像力は本当に凄い。
一般人の視点、北朝鮮コマンドの視点、社会から爪弾きされた少年達の視点。
それぞれ、考える事、重きを置く事は確実に違う。それを見事にかき分けている。
一方では賛美される事が一方では非難される事。それぞれの立場で狂って行く方向は全て違う。
それが、それぞれ、引っ張られる事無く見事にかき分けてあるのに驚嘆した。


作品の表紙は福岡市、特に本作の舞台となった百道浜周辺の航空写真なのだが、もうすでにこのときと、現在とでは様子が変わっている。
というのも下巻の表紙の福岡ドーム近くに福岡ドームと同じくらいの大きさの空き地がある。
これ、僕が通っていた高校のグランドで、毎日放課後はここで汗とゲロを吐いたものだ。
ここは、我が母校の新校舎が今はたっている。
全てが、どんどん移り変わっていくものだなぁ……と、へんなところで感じてしまった。

*1:[asin:4344401255:detail]